デュピクセントとは?
デュピクセント(一般名:デュピリマブ)は、特定のアレルギー性疾患に対して設計されたモノクローナル抗体です。IL-4およびIL-13という二つのサイトカインに作用し、免疫系の過剰な反応を制御します。これにより、炎症を抑え、アトピー性皮膚炎の症状を軽減します。
デュピクセントの効果
デュピクセントは、皮膚炎を起こすサイトカインの働きを直接抑えることで、Th2細胞の作用を抑制する、比較的新しいタイプの薬です。デュピクセントの治療により、患者さんが最も悩む症状であるかゆみが著しく改善されます。また、皮膚の乾燥や炎症を抑えることで、健康的な状態が促進され、皮膚の状態が改善されます。さらに症状が軽減されることで日常生活におけるストレスや不安が軽くなり、全体的な生活の質が向上することも期待されます。
デュピクセントの投与が可能な方
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当院では15歳以上の方をデュピクセントの対象とさせていただいております。
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また安全上の観点より下記の方はデュピクセントによる治療をお控えいただく可能性もございます。あらかじめご了承ください。
- 寄生虫感染のある方
- 生ワクチンを接種する予定のある方
- 妊婦または妊娠している可能性のある方、授乳中の方
特に、喘息・アトピー性皮膚炎・じんましんなどをお持ちの患者さまは、現在使用中のお薬や疾患について必ず医師にお伝えください。デュピクセントによる治療を開始する際、自己判断で喘息・アトピー性皮膚炎・じんましんなどの治療薬を減らしたり、中止したりすることがくれぐれも無いようにして下さい。
デュピクセントの投薬スケジュールと治療の流れ
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デュピクセントは、投与開始日のみ2本を皮下注射し、その後は1本を2週間に1回の頻度で皮下注射します。
当院で初めてデュピクセントの治療を開始される場合、デュピクセントの適応があるかどうかの判断を診察にて行います。当院はご予約制ではありませんので、まずはご来院いただき、診察にて医師までお声掛けください。
医師による診察では、デュピクセントを導入するにあたり、患者様がご不安に思われること(経済的な負担や通院スケジュール、自己注射の具体的な方法など)を解消していただけるよう、丁寧にお伝えさせていただきます。
デュピクセントの自己注射について
デュピクセントの自己注射は、医師の判断のもとで患者さま自身がご自宅で注射を行うことが認められています。これにより、通院の頻度を減らすことが可能となり、通院にかかる時間や費用を節約することができます。
また自己注射を選択することにより、通院に伴う時間的な負担や制約を軽減し、所得に応じて高額療養費制度を活用することで自己負担の金額を軽減することも可能です。
デュピクセントの副作用
デュピクセントの投与によって、以下のような副作用が現れる場合があります。
予想される
主な副作用
- 注射をした後に、注射部位に痛みを生じる
- かゆくなる、出血する
- 眼が赤くなる、眼の赤み
起こる可能性は
低いものの、注意が
必要な副作用
- めまい、ふらつき、立ちくらみ
- 呼吸時の「ゼーゼー」という音、呼吸困難
- 腹痛、嘔吐
- 発疹、むくみ
- 発熱、息切れ
- 手足のしびれ
またアナフィラキシー反応による症状は、起こる可能性は極めて低いものの必ず注意が必要な症状です。お気付きの際は、速やかに担当の医師へご相談ください。
デュピクセントの治療費
デュピクセントの治療に係る費用は、お薬代で自己負担3割負担の方で初回は約3.5万円、2回目以降は約1.7万円となります。2週間に1回継続的に投薬する必要があるため、目安として治療を開始した月は約5.2万円、翌月からは約3.5万円です。お薬代の他に診察料など別途費用が掛かってきますが、保険適用で各種医療証が使用できるため、医療証をお持ちの場合は上記の目安よりも自己負担が少なくなる場合があります。
デュピクセントの薬剤費 |
1本あたりの薬剤費 |
[ペン] 53,659円 |
自己負担額
(医院窓口でお支払いいただく金額)
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3割負担の方 |
16,098円 |
2割負担の方 |
10,731円 |
1割負担の方 |
5,366円 |
医療費助成制度について
デュピクセントは高額な治療となりますが、患者さまの経済的な負担を軽減するため、さまざまな医療費の助成制度があります。患者さまの収入にもよりますが、限られた費用負担で継続が可能になるケースがあります。1年間で支払った医療費の総額により還付金を受け取れる医療費控除や、1ヵ月の間に医療機関の窓口で支払った額が、一定の金額を超えた場合に、金額が払い戻される高額療養費制度を使うことをご検討ください。
1ヶ月に医療機関へ支払った金額(自己負担額)が一定額を超える場合に超過分の払い戻しがされる制度。詳しくは加入している保険者窓口もしくは厚生労働省のHPをご確認ください。尚、高額療養費制度の上限額は年齢や収入などによって異なります。詳しく試算をされたい方はこちらからシミュレーションください。
また大阪市では、大阪市内にお住まい、かつ公的医療保険に加入している0歳から18歳までのお子様は「こども医療費助成制度」を受けることが可能です。尚、令和6年4月からは「こども医療費助成制度」の所得制限の撤廃とともに、保護者の所得に関わらず、すべてのこどもを対象に医療費助成等の制度を活用いただくことが可能です。
同一世帯の年間医療費の総額が10万円を超える場合、領収書を添付して確定申告を行えば、所得状況に応じ税金の一部が還付される制度。医療機関、診療科などの区別はない為、薬局・薬店で購入した風邪薬などの購入代金、入院時の際の部屋代・食事代、その他医療機関への交通費も一部認められます。領収書は捨てずに、ご家族の分も全てまとめて保管しておくことをお勧めいたします。詳しくは、最寄り税務署もしくは国税庁HPをご確認ください。
デュピクセントは、炎症反応のメカニズムに着目し、その源を抑えるという全く新しいアプローチを持つ治療薬です。「アトピー性皮膚炎」の他にも「結節性痒疹」、「慢性蕁麻疹」など、これまで外用薬や内服薬による治療で十分な改善が見られなかった患者さんにも高い治療効果が期待できます。
治りにくいかゆみ症状にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。